一般社団法人全日本シビエ協会について
野生鳥獣による被害は、今や農林水産業被害のみならず自動車事故や列車事故、あるいは新種のウイルス被害の拡大の危険性など私たちのすぐ身の回りにおいて既に多くの摩擦を生じています。この様な摩擦は、野生鳥獣の生息域の拡大・あるいは農漁村地域における過疎化・高齢化による耕作放棄地の増加・手入れの行き届かない森林の増加など、社会情勢の変化や自然環境の変化などにより中山間地を中心に全国的な問題となっています。これまで多方面において多くの関係者がこの問題に取り組んできましたが、なかなか解決の道筋は見えていません。しかしながら、各方面の方々の努力の甲斐あってかここ2〜3年ジビエブームの兆しが見えてきました。皆さんの興味に多少なりとも火が付いてきたのだと思います。
ただ、残念なことに、この火はすぐにでも消えてしまいそうなか弱い火なのです。乱暴に扱えばすぐに消えてしまうかもしれません。
わたしたちは、野生鳥獣全般を日本の国土が育んだ貴重な地域資源と位置づけ、その地域資源を余すことなく有効活用するモデルを構築したいと考えています。利益を生む資源だけではなく、自然を豊かにする資源、人と人をつなぐ資源、自然と人をつなぐ資源。そんな宝の資源を親から子へ、人から人へつなげる。そんな思いを多くの方々と共有したいと願い一般社団法人全日本ジビエ協会を設立し、多くの仲間の参加を呼びかけ、一歩一歩前進させていきたいと思います。
今、食品を取り巻く環境は大変厳しいものがあります。異物混入・食品偽装などの問題、また安心・安全という言葉のみが独り歩きをしているようにも思えます。言葉のみが先行するのではなく、私たちがアクションを起こさなくてはならないと私は考えます。人間と自然は共存していかなくてはならないものなのに、人間は自然を破壊します。我々は今一度、見つめなおすことが必要だと感じます。
私は、30年近く、蝦夷鹿や猪、野鳥などをレストラン等の飲食専門店に販売して参りましたが、当時はハンターが野外で処理したものや、食肉処理業の資格なしで処理されたりしたものが、あたりまえのように流通していました。また、使う側も「ジビエとはこんなもの」という認識であったことも事実です。当時は供給する側も使う側も、ほんとうに一部だけでしたから、さほど大きな問題は起きていませんでした。しかし、15年位前から、蝦夷鹿は高価な食材として販売できるという風潮が流れ始め、色々な方や業者が参入してくるようになりました。その結果、食肉としての流通ではなく、一般問屋などが販売するという特殊な販売ルートとなり、購入する側がどこから購入したらよいか解らないという状況になっています。当然ながらそういう特殊ルート販売では、食肉衛生や食肉知識の点においても統一された概念や規格などの整備が遅れてしまっていることも否めません。
ここ2〜3年はジビエという言葉がブームとなってきています。みなさんの関心が高いいま、できるだけ多くの方々、できるだけ多くの業種の方々と意見交換できる場所の構築が必要だと考えます。
ぜひ私たちの活動にご参加ください。そしてジビエの普及や促進にご協力いただけますと幸いです。
理事 永野 和明